定年後の生活設計に悩む50代にとって、遊休・放置された別荘地を活用することは、新たな人生の可能性を切り拓く有効な手段になります。
現在、日本各地で増え続ける放置別荘地は、所有者にとっては固定資産税や維持費といった負担をもたらす一方で、地域社会においても環境問題や防犯リスクを生む課題となっています。
しかし、これらの放置別荘地を有効に活用することで、経済的メリットや地方での新たな働き方づくり、地域とのつながりといった心豊かなセカンドライフを実現できます。
本記事では、放置別荘地を取り巻く現状と課題を整理し、その賢い活用方法や実践事例、注意点について解説します。
遊休別荘地の現状と課題
放置された別荘地が増えている現状
近年、別荘地の多くが長期間放置されている現状が問題視されています。都市部に住む所有者は高齢化し、別荘地へ頻繁に訪れる機会がないまま、管理が滞った資産となっています。
その結果、多くの別荘地が利用されないまま荒廃し、地域全体の景観や価値にも影響を与えています。
特に、建物もなく土地だけが放置された状態は早期に手を打っていく必要があります。

僕たちが住む小諸エリアでもあちこちの別荘地で同様の現象が起こっています。
別荘地が放置されることで発生する問題
一番は環境問題です。放置された土地が雑草など荒れ放題になると、周辺の自然環境に悪影響を及ぼします。
また、樹木がそのまま生育すると、日が当たらない暗い状況になり、倒木の危険性も出てきます。
さらには、不法投棄の対象となりやすいなど防犯上の問題にも発展しかねません。



管理がされていない別荘地には、倒木がそのまま道路に放置されているような光景を目の当たりにします。
所有者の悩み
活用されない別荘地でも毎年の固定資産税は発生し、所有者にとって負担となります。
管理費のある別荘地では固定費がのしかかってきます。建物の維持には、定期的なメンテナンスや清掃が必要ですが、利用しない施設にかけるコストは負担にしかなりません。
さらに相続の問題があります。そもそも子供の世代に引き継ぐことを考えていなかったり、仮に相続するとしても手続きや費用が別荘地所有者にとって大きな悩みです。



親がそんな土地をもっていたのを知らなかったという子供世代の人たちもいたりします。
遊休別荘地活用のメリット
ここまで遊休別荘地の現状と課題について記してきました。そんな負の遺産的な一面がある遊休別荘地も見方を変えると、価値を見い出すことができます。
インフラ整備のメリット
森の暮らしを実現するには、生活していくためのインフラを整えないといけません。下水道や電気、ネットといった類ですね。
山林部にはこうしたインフラが整備されていません。当たり前のことですが、都市部に住む人には最初わからない盲点になります。
「手付かずの山林を買って自分たちの手でイチから開拓していけばいい・・・」そんなふうに考える人もいるでしょう。しかしそれは現実的ではありません。
サバイバル生活をしていくのならまだしも、多くの人は最低限の文化的生活がしたいはず。ライフラインはあらかじめ整備されているに越したことはありません。
その点、別荘地は区画として販売しているわけですから、既に必要最低限のインフラが来ているということになります。
都市部で当たり前のことが森ではそうではありません。インフラ整備は森の暮らしを始めていく上で一番重要な要素だということを認識しましょう。



例えば、下水処理で合併浄化槽を新規で導入すると100万円くらい掛かっちゃいます。
経済的なメリット
別荘地は先に書いたように負の遺産的扱いになっているので相場が安くなっています。
森林環境のあり、比較的広めの土地がリーズナブルな価格で入手することができるメリットがあります。
その代わり、それなりに荒れているのを覚悟してください。自分で整備する前提での低価格になります。
ちなみに、僕たちの住むイトーピア小諸の土地販売価格は100~200坪で50万円程度といったイメージです。(2025年1月現在)
これで水道が区画まで来ているのですから、森の暮らしを始めるには価値があります。



ぱっと見で「こんなところに家が建つの?」と安易に判断しないこと。要はやりようなんですね。
心理的なメリット
実際に現地に通い始めると今までとは違う森を感じられるようになります。旅行や観光で行くのとは感覚が変わっていくのがわかります。
まずはお手軽に、森の中を散歩するといったことからスタート、訪れる鳥の観察をする、木や植物を学ぶ、自分だけの土地で家庭菜園を始めるといった新たな趣味を見つけることができます。
また、住民の人たちや地元コミュニティと接することで、新たな価値観を知り、豊かな人間関係を築くきっかけにもなります。
さらには、自分でつくったものを売る、小さなお店を始める、リモートを活用して場所を選ばす仕事をするといった新たな働き方を始めることもできます。
これからの森暮らしは、単に週末だけリラックスするようなものだけではもったいないです。新しいアクションを起こす拠点にしていくことをおすすめします。



週末だけ通っていてもそのうち飽きてしまいます。新たな拠点でチャレンジ!人生が変わります。
社会的なメリット
放置別荘地を活用すると、定期的に適切な管理が行われるようになります。そのことが結果として周辺環境の保護や改善につながります。
また地域経済や観光の振興につながるので、自ら地域活性化の一役を担うことになります。自分が動くこと自体が社会貢献になるということですね。



社会貢献するために・・・ではなく、動いた結果が社会貢献という方が自然のながれですよね。
遊休別荘地活用のデメリット
もちろん良いことばかりではありません。デメリットは自分たちの手で敷地の手入れをしていかないといけないという点です。
樹木がそれなりにあったら伐採作業からのスタートになります。これまで手にしたことがないチェンソーを使うことになります。機材の購入に加え、我流でやるには危険な作業、まずは講習会などに参加してからの準備が必要になります。
なかにはかなりの直径のもの、電線に当たりそうなもの、どっちへ倒れていくかわからないものなどもあります。こうした木々の伐採はやはりプロに頼まないといけません。素人判断では大変なことになります。
当たり前のことですが、プロに頼むとそれなりの費用が掛かります。どの程度の範囲でどんな作業が発生するのかは選ぶ土地によって変動します。
また家が建てられるように敷地をつくることも必要です。伐採もさることながら根を取り除くといった丹念な作業が待っています。
敷地を整備する工程は、自分でやるところと業者さんに頼むところをバランスとりながら進めていかないといけません。
また住み始めてからも手入れはずっとついてまわります。自然相手、予期せぬことが起こります。そのつど対処していくことになります。
自分でできることはやる・・・という気持ちがないと、遊休別荘地の活用は難しいと思ってください。



僕たち夫婦もずぶの素人から失敗を重ねつつ進めてきました。人生初をたのしむ気持ちが大切です。
遊休別荘地の具体的な活用方法
二拠点生活の拠点をつくる
都市部と地方を行き来する二拠点生活に憧れをもっている人もいるでしょう。コロナ禍以降、このスタイルが気になるようにもなったはずです。
僕たちが考える二拠点生活は、単に気分転換を図るためのものではなく、拠点を複数もってそこから新たな活動をしていこうというもの。
そして、場所に固定されることなく、柔軟で自由な働き方をしていくためのベースという視点に立っています。
拠点ベースを森の中に築いていくには取り組みやすさ、具体化のスピードという点で、遊休別荘地が最適です。



二拠点生活がしたい・・・というのではなく、新たな拠点をつくって見える景色を広げる!です。
自分たちだけの小さな農園にする
別荘地には土があります。自分たちで耕作していくことで畑に育てていくことができます。
巷で人気のクラインガルテンと呼ばれるものがありますが、イメージとしてはそんな感じです。小さな家と小さな畑をつくることで自分たちだけの農園を育んでいきます。
そんな憧れとばかり思っていた世界を目の前に実現できるのが遊休別荘地の活用法の一つです。



あらかじめ用意された場所より、自分でイチからつくった方が愉しいし、愛着が湧きますよね。
小商いの基盤をつくる
いつか自分のお店をもってみたい。誰もが一度は夢見る話ではないでしょうか?その夢を具体化できます。
借り入れして、テナントに家賃を払うという従来のやり方だと返済に追われ、お金のためにひたすら運営するといった本末転倒な流れになりがちです。
一定の年金収入を得ながら、自分の土地で自分でつくった小さなお店を運営していく方法なら、リスクを最小限にすることができます。
森の体験施設。ゲストハウス運営、イベントスペース運営など可能性は広がります。
自分がやりたかったことを自分のお店で実現する。そんなチャンスに恵まれるのが遊休別荘地です。



まずは自分で実践。僕たちの事務所&店舗はイチからセルフビルド。自分が好きなように手を入れています。
将来の移住への足掛かりになる
将来、その地への移住を視野に置くなら、このステップが良いと思います。いきなり移住してしまうと「こんなはずではなかった・・・」ということになるかもしれません。
最終的に地方移住するのか、二拠点生活のままいくのか。どちらにするかはライフスタイルへの価値観です。頭の中で考えるのではなく、やりながら次はどうするかを考えていくのがベターです。
実際に実践してきた足跡


ここまでの内容をみてきても「ほんとに自分でそんなことができるの?」と思う気持ちもありますよね?最初は無理もないことです。
そんな方のために僕たち夫婦が歩んできた道のりをざっくりご紹介します。
さかのぼること7年前。焚き火の仕事をするために物件さがしを始めました。結果、山の中腹にあるログハウスを見つけ、町と山を行き来する生活が始まりました。
宿泊施設を運営していたので、予約が入ると数日前に山へ出向き、受け入れ、あとかたづけ、また町へ戻るというスタイルを4年間続けました。
その後、もっと広くて木々が美しいフィールドを求め、今の森へ至ります。手付かずの森を夫婦二人で切り拓くところからスタート、成り行きで小さな家を建てていくことになります。
それから2年強、森を手入れし、自分で暮らしをつくるという実体験のすばらしさを身をもって感じるようになります。
こんな他ではない体験を一人でも多くの人に知ってもらいたい!いつしか芽生えていった想いで今この仕事をしています。
僕たちは単なるアラカン夫婦、何の知識も経験もありませんでした。そんな二人だけでもコツコツ試行錯誤しながら森の暮らしをつくっていくことはできました。
厳密にいうと、僕たちのフィールドは別荘地ではなく別荘地に隣接した土地です。その分、水道引き込みや浄化槽といったインフラ整備は制約面、コスト面、時間面で別荘地よりハードルが上がりました。
でもそれをやったおかげで、インフラ整備がどれだけ大事なのかも実体験しました。こうした経験をふまえ、別荘地活用を推すようになったわけです。
遊休別荘地活用の注意点とアドバイス
法律的な規制
別荘地を活用する際には、用途地域や建築基準法などの法律に基づく制約を確認する必要があります。特に、用途変更や新たな建物の建築には行政機関の許可が必要です。
ここを知らずして先に進めると、後でストップがかかり、最悪の場合は計画取り止めといった事態にもなりかねません。
「計画段階で早めに行政機関で相談を持ち掛ける」これが何より重要なポイントです。忘れないようにしてください。
資金計画
森の開拓や家の建築、リノベーションにはまとまった初期費用が掛かります。明確な資金計画を立てましょう。
クラウドファンディングや助成金の活用も選択肢の一つですが、まずは自己資金でどうするかを考えるのが得策。順番を間違わないようにしましょう。
周辺住民との関係
新しい土地へ何かをするというとき、周辺住民の理解が必須です。ここでもめると次はないと言っても過言ではありません。
絶対に自分たちだけで計画を進めないよう、早い段階から接点をもって考えていることを共有していってください。
新しい用途で活用する際には、さらに周辺住民との信頼関係がないと前に進まなくなります。事前に丹念に説明し、意見に耳を傾け、トラブルにならないよう努めます。
専門家への相談
法律ルール、資金の組み立てなどは自分たちだけでは知らないことが多く、肝心な時で気づくことができません。タイミングを逸すると後々致命傷になりかねないケースも多々あります。
不動産や建築の専門家に相談することで、より安全かつ効率的な進め方ができます。経験と知識が豊富な信頼できる専門家を選んでいくことをおすすめします。



僕たちも家の建築については一級建築士にサポートしてもらうことで節目節目でかじ取りをしてもらいました。知らない世界は専門家が早いです。
まとめ
定年後の心豊かなセカンドライフを実現するための有効な手段として、放置された別荘地の活用があります。新たな挑戦を通じて、人生の新しい可能性の扉を開けてみませんか?
森プラス不動産では、イトーピア小諸別荘地をプラットフォームにして、自分でつくる小さな森の暮らしづくりを具体的にサポートしています。
「まだ何となく考え始めたレベル・・・」そんな漠然とした状態からでも大丈夫です。お気軽にご相談ください。