山林に家を建てて森の暮らしを始める|知らずに進めると後悔する重要ポイント

別荘

森の中に小さな家を建てて暮らす――。自然に囲まれ、シンプルで自分らしい暮らしを目指す人が描く暮らし方ですね。しかし、山林に家を建てるには、都市部とはまったく違うルールや準備が必要だったりします。

これらを知らずに闇雲に進めると、後から痛い目に遭うことになります。

この記事では、法律的な視点、生活インフラ、その他の実務的なポイントに、僕たちが実際に体験した事例を交えながら、山林に家を建てて失敗しないための基礎知識をお伝えします。

目次

法律的な視点|建築基準法・都市計画法などの確認が最優先

最初に法律的なところを大まかに押さえておきましょう。主に都市計画法、建築基準法が関係してきます。

都市計画区域・用途地域

まず山林がある場所がどんな区域にあるのかを確認します。都市計画区域内であれば、建築確認申請が必要になります。

建築確認申請とは

新築や増改築など、建築基準法や関連する条例に適合しているか、建築主事(または指定確認検査機関)に確認してもらうための手続き。

また、用途地域や建ぺい率、容積率、接道義務など、都市部同様の規制がかかります。

用途地域とは

都市計画法に基づいて土地の用途を規制し、建物の種類や大きさなどを制限した地域。安全で住みやすい街づくりを目的とし、主に市街化区域に設定される。

用途地域は、住居系、商業系、工業系の3つに大きく分類され、さらにそれぞれ13の地域に細分化されています。用途地域ごとに、建てられる建物の用途、容積率、建ぺい率などの建築規制が定められている。

都市計画区域外でも、建築基準法が全面的に適用されないだけで、建築物としての最低限の安全基準(構造や防火など)は守る必要があります。

接道義務

建築確認申請が必要な場合、「建築基準法上の道路」に接していないと家は建てられません。具体的には、幅4m以上の道路に2m以上接しているか?という基準です。

山林の多くは「道っぽいもの」はあっても法的に道路でない場合が多く、注意が必要です。

僕たちのフィールドはこの接道問題で最初とても苦労しました。赤道(あかみち)なんて言葉もこのとき初めて知りました。

土地の地目と登記

地目が「山林」や「雑種地」でも家は建てられますが、状況によって「宅地」への変更や農地転用が必要な場合もあります。

地目とは

土地の用途を表すもので、不動産登記法で定められた23種類の分類。登記簿に記録され、土地の現況や利用状況によって判断されます。主な地目には、田、畑、宅地、山林、原野などがある。

土地の地目と登記情報は、必ず法務局で登記簿謄本を確認しましょう。

建築確認申請の有無と必要な構造基準

都市計画区域外でも、2階建て・延床100㎡を超える建物や用途によっては申請が必要になります。

木造平屋など小規模住宅なら申請不要な場合もありますが、構造安全や耐震性は自己責任になります。このあたりはかなり専門的分野なので建築士さんなどに確認をした方がいいです。

お金を掛けたくないからと素人目線で安易な方向へ進めがちですが、それは良くありません。後々痛い目に遭います。

2. 生活インフラの視点|水・電気・トイレ・道

人間が生活していくためには最低限のインフラが必要になります。それが水、電気、トイレ、道です。各々について解説します。

水道

まず公共水道が近くまで来ているかを確認します。公共水道を引き込むときは、引き込み距離によって工事費が大きく変わります。

業者によって見積り額は変動します。必ず複数社で相見積りをとることをおすすめします。

うちのフィールドでは150万円以上の開きが出て愕然としたのを憶えています。

冬季の水道管凍結対策も必要です。水道管や配管の凍結を防ぐために使用されるヒーター付きの帯状のアイテム(凍結防止帯)を巻きます。

公共水道が引かれていない山林では、井戸掘りか沢水利用といった選択肢になります。

井戸は掘る深さなどで変動し工事費100〜300万円が相場と言われています。沢水が使えると便利ですが、水質検査と定期的なメンテナンスが必要になります。

電気

まず近くの電柱を確認します。最寄りの電柱までの距離に応じて引込費用が変わります。(目安:10〜50万円)

ソーラー+バッテリーでオフグリッド化する選択もありますが、設備費用や冬季の日照問題もあり、すぐさま導入というにはハードルがあります。

トイレ

山林と呼ばれる地域には下水道が整備されていません。水洗にするには合併浄化槽の設置が必要になります。設置費は補助金込みで50〜100万円程度、維持管理費も毎年必要になります。

合併浄化槽とは

トイレの汚水(し尿)だけでなく、台所やお風呂などの生活雑排水も一緒に処理する浄化槽。公共下水道が整備されていない地域で、生活排水をきちんと処理するために欠かせない設備。

コンポストトイレ(バイオトイレ)も選択肢です。環境負荷は低いが、慣れが必要と言われています。

配管が引けないフィールド下の方で試してみたいと考えています。

■ 道路とアクセス

降雪地や山間地では、1年を通してアクセスに問題がないかの確認が必要です。今は大丈夫でも冬になるとどうなるのか?といった見方をしてください。

幹線道路、公道以外は除雪車が来ないケースがほとんど。雪深い場所なら除雪はどうなるのかを調べておきたいところです。

また山林には私道もあったりします。通行に妨げにならないかの確認があると万全です。

その他の視点|自然環境・暮らし方・コミュニティ

環境条件や住民との関係も大切なチェックポイントです。

地盤・災害リスク

山林には土砂災害警戒区域が含まれる場所が多くあります。そもそも危険な場所に家を建てるのは避けたいですし法的な制限あります。

崖下、谷筋、沢沿いといった地域は避け、できるだけ安全な場所を選ぶようにしましょう。

また山林というくらいですから大半は斜面です。どの程度なのか、どういう使い方をするのか、どう建てていくのかなどイメージを描いていきます。

このあたりも素人目線では難しいので専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

建築前に地盤調査を行うといった方法もあります。

近隣との関係

近隣住民との関係は重要、一度もめると後々大問題に発展します。

山林特有のものとして隣の土地との境界があいまいです。境界はトラブル原因の最たるもの、お互いの確認が必要です。境界確認書といった公的資料もありますがそれなりの必要が掛かります。

別荘地内であれば管理会社の規約、集落であればその地区のルールを確認しましょう。住民問題は住んだ後にわかることが大半です。でもそれでは遅いので土地下探し段階でわかることは調べておきたいです。

近隣別荘地に人たちはフレンドリーで助かりましたが、近隣集落にはややこしい一面があり、問題に当たった経験があります。

冬の備え

都市部で生活してきた人にとって山間部の冬は予想を超えます。降雪時の凍結・雪下ろし・車のアクセス確保などわかる範囲で近隣住民にヒアリングできるとベターです。

何より自分で感じることが一番、短期滞在で四季を体験することをおすすめします。

さらに詳細を知りたい人は下記記事を参考にしてみてください。実体験ベースで書いています。

まとめ

山林に家を建てるには「調査・計画・備え」がカギになります。ここまでの要点をまとめると下記のようになります。

チェックしたい項目主なチェックポイント
法律都市計画区域か?接道義務は?登記と地目は?
水道公共 or 井戸沢水?水質検査と凍結対策は?
電気電柱までの距離と費用、オフグリッドの検討
トイレ浄化槽設置 or コンポストトイレ?維持管理は?
道路通年アクセス可能か?私道・共有道路の扱い
自然地盤、災害リスク、日当たり、動植物の影響
人間関係境界問題、近隣住民、管理会社の存在

山林の土地は価格が安く、自由度も高いように見えますが、その分見えないリスクも多く潜んでいます。

不安を抱えず、森の暮らしの第一歩を踏み出すには、ぜひ専門家(宅建士・建築士・インフラ業者)との連携を取ってください。

いきなり入手ではなく、少し長い視野で検討するのがベスト。実際に現地を歩き、四季を通じて観察することが後悔しない心得になります。

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