家を新築したときには、建物表題登記が必要になります。森の家はセルフビルドというケースがあります。まさに僕たちの家がそうでした。
初めて家を建てた!それだけで安心してしまいます。でもその後に待っている手続き。知らない世界で抜け落ちてしまう登記関係。実体験を交えながら解説しています。
建物表題登記とは
表題登記とは、まだ登記されていない土地や建物について、新規で行う登記のこと。建物の場合は、「新築」した建物には登記記録がないので、完成時にどのような建物であるか、誰が所有者であるか登記する。これを「建物表題登記」という。
SUUMOより引用
この表題登記は建物や土地を取得した日から1ヶ月以内に行う必要があります。怠ると10万円の過料が掛かるルールになっています。
それを知るとびっくりしますよね?僕たちの場合もそうでした。
実状(2024.6法務局でヒアリング)として、建物表題登記を行っていない物件は多数あるみたいです。ただ今後、相続登記の義務化などが進むと状況は変わる可能性があります。
マンションなどを住宅ローンで購入したときは、金融機関として建物表題登記が必要になるので気にしなくてもいいのですが、自分で家を建てたときは誰も教えてくれないので抜けてしまいがちです。
登記は管轄の法務局で手続きします。建物表題登記は不動産鑑定士の業務範囲です。専門家にやってもらう選択肢もあります。ただそうすると報酬を払わないといけません。
そこで自分でやる方法も知っておくとベターです。
表題登記申請に必要な書類
どうしたらいいかわからないので、法務局へ相談予約をして出向きました。
幸い担当の方がとても親切でこちら目線。公的機関らしからぬ対応で助かった記憶があります。
そのときにもらったサンプルです。
登記申請書
赤字部分を記載します。構造や床面積の記載内容は監修してくれた一級建築士に確認しました。
建築確認済書類一式
確認済証のみコピーして持参します。書類一式はいったん法務局へ預けることになります。
建物引渡証明書
建築を工務店などへ依頼した場合はこんな感じです。
セルフビルドの場合は、外注部分の業者へ署名をもらう必要があります。僕たちの場合は水道設備業者さんになりました。複数あっても一社でいいみたいです。
上申書
セルフビルドの場合はこれが必要になります。上申書とは、相続登記や建物表題登記などで、必要な添付情報が揃わない場合にその内容や理由を法務局や登記所に伝えるための書類です。何だか大げさですよね。
図面
各階平面図と建物図面が必要になります。注意が要るのは縮尺。建築士が書く図面とはサイズも体裁も違います。
用紙はB4など細かな規定があります。書面を確認しましょう。
僕たちは手書きで書くことに。そのために製図用ペンなるものも購入しました。
一度提出した後、法務局より記入項目が抜けているとの電話があり、再作成差し替えしました。できるだけサンプルと同じように作った方がいいようです。
昔ながらの慣習のまま、アナログ方式で仕事をしているようなイメージを持ちました。
受付されると・・・
受付が完了するとこんな書類がもらえます。登記完了予定日が空欄なのは、この後、書類に不備がないかの確認をし、現地チェックで担当者が来るからです。
全て完了するまで約2週間と言っていました。ちなみに完了したか否かは自分から確認しないとわかりません。法務局へ事前電話を入れて向かいます。
このあたりも仕事の仕方としてどうなの?と感じますが、おそらく古い慣習のままなのでしょう。
法務局へ行くと登記完了証と預けておいた建築確認書類一式が戻ってきます。
所有権保存登記
所有権保存登記とは、不動産について初めて行われる所有権登記で、新築した建物の所有者が誰であるかを登記簿に記録する手続きのことを言います。
所有権保存登記を行うことで、その建物の所有者が自分であると明示します。
土地を購入して新築一戸建てを建てた場合、土地の「所有権移転登記」を行い、建物は「所有権保存登記」を行うというのが一般的な流れです。
所有権を登記するメリットは、銀行からお金を借りられたり、第三者に所有権を主張することができることです。登記することで、売買や賃借、相続や贈与をスムーズに進めることができます。
所有権を登記しないと上記の逆になり、デメリットとなります。
必要になる書類は以下の通りです。申請書は法務局のHPからダウンロードできます。
登記申請書で書き方が難しい箇所は青枠部分だと思います。以下解説します。
申請根拠条文
申請根拠条文と呼ばれるものです。申請人がどのような立場の人なのかを表します。建物を取得した本人が申請する場合には、74条「第1項」「第1号」が根拠になります。
課税価格
建物の固定資産評価額がある場合には、その価格を記載します。登記を申請する年の途中で建物が建った場合には、まだ固定資産評価額がありません。(固定資産評価額は毎年1月1日時点を基準にして算出される)
固定資産評価額がない場合には、次の式で価格を求めます。
(管轄法務局が定めた1㎡あたりの価格)×(延床面積)=(建物の価格)
管轄法務局が定めた1㎡あたりの価格は、「新築建物課税標準価格認定基準表」と地域名を入れて検索します。(長野県の場合が上記)
僕たちの場合だと、100,000円×延床面積19.87=1,987,000円が建物の価格になります。
登録免許税
所有権保存登記の税率は、4/1000(0.4%)です。建物の価格×0.4%で計算できます。
僕たちの場合は、建物価格1987000円×税率0.4%=7948円となり、端数切り捨てで7900円でした。
登録免許税の軽減措置の適用を受ける場合には、「住宅用家屋証明書」が別途必要になります。その場合は役所で入手します。
受付されると、建物表題登記のときと同じ紙を渡されます。完了予定日は11日後となっていました。
登記完了証と登記識別情報通知の受領
完了予定日以降へ法務局へ出向きます。受領印と身分証明で登記完了証が受け取れます。
同時に登記識別情報通知なる書類も一緒に受け取ります。「昔の権利証に該当するものですので大切に保管してください」と言われました。
法務局独特の仕事のながれ
「ここは受付だけなので中味は見ません」「完了は予定なので必ず事前に進捗確認で電話してください」「何か不備があったときのみこちらから電話します」
といった旧態依然とした対応をされるので、そのつもりいた方がいいです。
登録免許税を払っているのに上から目線。何でこっちから問い合わせするの?と釈然としないことだらけですが、やむを得ません。
また完了までは2週間前後かかります。そのつもりで早めに申請しておくことをおすすめします。
専門家へ一任するか自分でやるか
建物表題登記は土地家屋調査士の業務範囲になります。一任すれば抜かりなく全てやってくれるでしょう。その際の報酬は8~10万円あたりが多いようです。
所有権保存登記は司法書士の範囲。登録免許税の他に司法書士への報酬が発生します。
専門家に頼まずに自分で登記手続きをするという選択肢もあります。そうすれば報酬を払う必要はありません。
自分でやるときはまずは所轄の法務局へ相談に行くといいと思います。
法務局ってハードル高い存在ですよね?僕たちもそうでした。自分ではできない内容なんじゃないか?訊きに行ってもちゃんと教えてくれないんじゃないか?そう思ってました。
顧問税理士や関わってくれた一級建築士にも質問しましたが、ど真ん中の専門ではないため、本当のところはわかりません。
じゃあ、法務局へ行って直接訊くしかない!という感じで出向きました。すると素人でも何とかできそうだということがわかりました。
たまたま担当者が丁寧親切だったという幸運があったのですが・・・。担当者によってレベルは違うかもしれませんが、それなりに手続き方法を教えてくれるように思います。
ただ、わからないことを調べながらの準備にはそれなりに時間が掛かります。また法務局は平日日中しかやっていません。会社員をしながらやるのは結構大変になるでしょう。
法務局へ何度か通って手続きするか、その時間と手間を惜しむのか。どちらかになります。
ちなみに僕たちは自分たちがサポートする立場になる前提でチャレンジしたという経緯があります。
せっかく自分で建てた家、最後まで自分の手でやってみるというのも良いのでは?